私が恋した男〜海男と都会男~
編集部フロアにいるメンバーで季刊の表紙を決める投票を行い、姫川編集長が茶封筒に入った投票用紙を一枚ずつ取り出しながら開票し始めたので、私も手伝おう。

「姫川編集長、手伝います」
「わかった。俺が番号を読み上げるから、おまえは正の字で数を書け」
「分かりました」
「先ずは2番」

ホワイトボードに書けるペンを持って、姫川編集長が次々と投票用紙に書かれている番号を読み上げ、その都度投票された表紙の下に正の字で数を書き、周りの編集部のみんなは行方を見守っている。

「これで終わりだ。1番」
「1番…と」

正の字の縦一本を書いて、どれが一番投票されたか、ざっと見ると、2番の表紙に一番投票されていて、私が投票した4番の表紙は全体の2位だった。

「これで決まりだな」

姫川編集長がパンツのポケットからスマホを取り出して、何処かに電話を掛け始めた。

「俺だ。投票が終わったぞ。2の表紙で仮印刷を頼む。また後でな」

姫川編集長は通話を終えると、スマホをパンツのポケットに入れた。

「青木印刷所にいる荒木に電話を掛けて、表紙の決定を伝え、仮印刷に入ってもらった。明後日には仮印刷された季刊が出来るから、バイク便で送られてくる。それぞれが校正がないかを確認してもらうからな。俺からは以上だ」

姫川編集長はそう言うと、ホワイトボードに貼り付けた表紙の用紙を剥がし、タウン情報部のエリアに戻っていった。

「仮印刷まで工程が進むと、いよいよ発売だって思うよね。九条さんのページはどんな感じ?」
「ひたすら歩いて取材した場所があるから、そこを読んで欲しいかな。ファッション部だって水着のページが多いんだよね?」
「季節物だからね。モデルを選ぶのも大変だったけど、水着を探すのも苦労したよ。スポーツ部は水泳選手やシンクロナイドスイミングを取り上げてたんでしょ?」
「そうだよ。慣れない水中の撮影は大変で、毎回びしょ濡れになるし。でも、普段は陸のスポーツを追っかけているから、取材や撮影が新鮮だったよ」

ファッション部とスポーツ部の同期で季刊の話しで盛り上がる。

通常の誌面作りとは違って、3つの部署の記事が1つの雑誌になるので、ここまでくるのが大変だったけど、早く仮印刷になった本を読みたいな。
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