私が恋した男〜海男と都会男~
翌日になり、今日は次号発売の『Focus』の記事毎のページをどういう順番で載せるかを決める話し合いをすることになり、タウン情報部のエリアにホワイトボードを持ち込んで、姫川編集長と記事タイトルを書いたメモ紙を磁石でホワイトボードに貼り付けて、それぞれのタイトルの順序を入れ替えて、読者の読みやすさを訴えてみた。

「それだとグルメの情報のページが続くだろ?俺たちはグルメ雑誌を作ってるのか?」
「作ってませんし、このお店の情報のページは最初に持ってくるよりも、こっちが良いと思ったんです」
「あー、こんなんじゃ決まんねー。一旦頭冷やしてこい」
「……分かりました」

お互い頭に血が上って話し合いにならないと感じ、私は編集部フロアを出て階段を降りて、1階のロビーにある大きなソファにドサっと座った。

ファッション部にいた時は順番決めに携わることがなかったし、タウン情報部に来てこんなにも苦戦するなんて思いもしなかったから、今までファッション部にいた時は何も深く考えずに仕事をしてたんだな。

私が異動するまで姫川編集長は1人で『Focus』を作ってたんだもんなぁ…、記事に書く文章の言葉選びも的確だし、読者に伝わりやすいし……、あー!もー!考えれば考えるほど自分と姫川編集長の実力を比較しちゃう。

「おー、九条ちゃんはこんなところでサボり?」

背後から声を掛けられたので振り向くと、高坂専務が私の所に歩いてきて、もうひとつのソファーにどかっと座った。

「高坂専務、お疲れ様です。私はサボっていませんよ」
「じゃぁ、姫川にこっぴどくやられたからここにいるってこと?」
「!」

図星に口をつぐむと、高坂専務は腕を組んで苦笑する。

「あいつは口や態度もキツくて相手にするとしんどいけど、九条ちゃんをタウン情報部の一員として見ているから言うのであって、九条ちゃんも遠慮せずにとことんやり合っていいんだよ」

遠慮せずにか…、元は『Focus』を読んで貰うためにはどうするかを話し合っていたのに、いつの間にか姫川編集長と自分のことで悩むことに代わってた。

とにかく頭冷やして冷静になって、全体のバランスを見ることが出来るようにならなきゃ。

「次からはとことん言えるようにしてみます」
「その意気、その意気。また姫川にパワハラされたら、いつでも訴えに来ていいから」
「ありがとうございます」
「じゃあね」

高坂専務は大きなソファから立ち上がると、ロビーを通って階段を登っていった。
< 141 / 161 >

この作品をシェア

pagetop