私が恋した男〜海男と都会男~
私も編集部に戻って、『Focus』のページ決めを話し合っていかなきゃ…、頭の切り替えスイッチを入れるように思いっきり深呼吸をして、モヤモヤとしていた気持ちをなくす。

「よし!戻ろう」

ソファから立ち上がってロビーを通って階段を登り、ICカードを使って編集部フロアのドアを開け、タウン情報部のエリアに向かうと、姫川編集長が自席に座っていたので、そばに行く。

「頭は冷えたのか?」
「冷やしてきました。ページ決めを進めましょう」
「ふん」

気にしない、気にしない。

改めて姫川編集長とホワイトボードの前に立って、ページ決めについて話し合いを再開した。

「もう一度、タイトルの順序を最初の位置に直してもいいですか?」
「やってみろ」

タイトルが書かれた用紙を、話し合い当初に貼られていた順序に並べ直した。

タウン情報部に異動してからは取材や原稿作りなどをこなす事に必死で、記事全体のバランスを考える余裕が無かったのが事実で、姫川編集長の指摘を改善するには読者目線で考えてみようと、ホワイトボードに貼り付けてある記事タイトルの紙をざっと見渡す。

先ず来月の『Focus』が取り上げる街は郊外にあるベットタウンだから、巻頭ページは姫川編集長が担当した記事がいいでしょ?次はイラスト入りの地図とそれにリンクした店舗のインタビュー記事がくるといいよね。

「その次はこの記事…」
「……」

タイトルが書かれた用紙を次はこれ、グルメ情報の記事はこっちと順序を入れ替えてみて、姫川編集長は黙って私の動きを見ている。

またざっと見渡すもしっくりとしないなぁ…、自分だけじゃなくて姫川編集長もどんな考えでいるかを知りたいな。

「姫川編集長はどの順序でお考えですか?」
「前半はお前が考えている順序でいける。俺のなかでは中間のページから後半のここまでは、こう考えている」

姫川編集長が中間と後半のタイトルが書かれている用紙の順序を入れ替えた後のをみて、自分でしっくりこなかった部分が埋まって、やっぱ経験の差か…。

「私ってまだまだですね」
「俺を追い越すなんて100年早ぇ」

自信たっぷりに言い返された…、でも前半は私の考えを採用してくれたのは嬉しいな。

「来月はこの順序で行くぞ。順序をメモしたものを用意して、原稿と一緒に青木印刷所に送れ」
「はい」

自分の席に戻ってパソコンの電源を入れ、ホワイトボードを見ながら文章作成ソフトで順序のリストを作り、それをプリントアウトし、引き出しを開いてバイク便に頼む伝票と原稿を入れる封筒を取り出した。

宛先に青木印刷所の住所と企業名を記入して、封筒にプリントアウトしたタイトルのリストと次号の原稿を入れて封をし、表に伝票を貼り付ける。

受話器を持ち上げてバイク便に電話連絡をし、茶封筒を持って編集部フロアを出て階段を下り、ロビーを通って四つ葉のビルを出て、ビル前でバイク便を待っていると、バイク便が来たので茶封筒を渡す。

これであとは青木印刷所で印刷が出来るのを待つだけだ。
< 142 / 161 >

この作品をシェア

pagetop