私が恋した男〜海男と都会男～

「今日は料理の写真をメインにするから、今から【もりや】に行くぞ。荷物を持て」
「分かりました、用意します」

　原稿を作ろうと思って電源を入れていたパソコンを一時休止モードにし、姫川編集長と共に四つ葉出版社を出て行った。

　【もりや】へ向かう途中、交差点の信号が赤になったので立ち止まって、仕事の流れを確認する。

「撮影に必要な道具は俺が準備してあるから、九条は隣で俺の補佐をしろ」
「分かりました」
「夕方までには写真を組み込んだ原稿を仕上げて、明日には印刷会社にデーターを送れるように仕上げなきゃな。【もりや】から出るには何時くらいがいいか…」

　姫川編集長が腕時計で時間を確認してると、また私のお腹が鳴っちゃった。

　朝ごはんをちゃんと食べてきたけどトースト１枚だけじゃ駄目だったか…、こうもお腹が鳴るのは女子としてどうなの？

「ちゃんとご飯食べてきたのに」
「ぷっ、くくく…。お前の腹、面白れーなー」
「私は面白くないです、もう！」

　丁度信号が青になり、私はムカッとして姫川編集長よりも歩く速度を早める。

「今度美味い店、連れてってやるよ」
「何か言いました？」
「いーや、別に。何でもねーよ」

　姫川編集長に何か言われたような気がしたけど、気のせいだったのかな？

　暫くして【もりや】に着き、表にあるメニューは昨日訪れた時と一緒で３つで、これが基本なんだ。

　姫川編集長が先に玄関を開けて、私も後に続く。

「へい！らっしゃい、昨日はどうも」

　大守さんは食器を拭きながら、元気よく挨拶をする。

「此方こそありがとうございました。今日は撮影をメインにさせていただきたいので、料理は鶏定食でお願いします」
「喜んで！」