私が恋した男〜海男と都会男~
「このたび、我が四つ葉出版社は夏に新しい雑誌を発行することに決めた」
「え…、雑誌を作る?」
「いきなりだよね」

 高坂専務の突然の言葉に、フロアにいるみんながざわざわし始める。

 この時期に新しい雑誌を作るとなると、新しい部署が立ちあがるってことかな?ファッション系ならレディースは『Clover』があるし、メンズとか?スポーツだって『Scoperta』があるから、出来るとしたら音楽?美術?文芸?と新しく立ちあがりそうな雑誌の分野を浮かべた。

「今までそれぞれの部署で単独の雑誌を発行してたけど、それとは別に3誌合同で1つの季刊の雑誌を出すよ。うちの出版社は他社と比べてまだマイナーだからね、季刊でインパクトを与えてそれぞれの雑誌を知ってもらおうって思うんだ」
「3誌合同だなんて、そんなのが可能なの?」
「通常の業務だってギリギリなのに……」

 周囲から小さな不安の声が上がるのは無理もなく、私だって読者が増えることは喜ばしいけれど、今進めている『Focus』の制作スケジュールだってギリギリで、これ以上印刷所への原稿の提出が遅れたらまずい。

「水瀬のところは、夏のファッションを中心に水着とか取り入れるのもいいね。荒木のところのスポーツはマリンスポーツ系を取り上げられたらベストだけど、荒木に連絡は取れそう?」
「分かりました。早速、本人に連絡してみます」

 いきなりの展開に不安を抱える私たち社員を余所に高坂専務は次々と指示を出し、水瀬編集長はこの場にいないスポーツ部の荒木編集長に連絡を取ろうとスマホの画面を操作している。
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