私が恋した男〜海男と都会男~
「返事がきました。『無茶ブリしやがって』って来ましたけど、季刊を作るのは賛成みたいですね」
「荒木が賛成なら大丈夫だね。姫川のところは、海がある街とかいけそう?」
「当てもなくはないが、どうしても海がある街じゃないといけないのか?」
「統一感をもたせないとね。季刊の進行のトップは姫川で、どんな街を取り上げるかは任せるよ」
「……」

 姫川編集長は無言で腕を組みながら高坂専務をじぃっと見ていて、なんだか雰囲気的に姫川編集長から黒いオーラのようなものを感じるんだけど…。

「はいはい、やるって決まったらやるしかないでしょ?」
「そういうことだから。じゃあスケジュールは追って連絡するから、みんなよろしくね~」
「ちっ…、勝手に言ってろ」

 私を含め周囲は姫川編集長と高坂専務のやりとりにハラハラしていると、水瀬編集長がパンパンと手を叩いて場の雰囲気を和らげ、高坂専務は手のひらをひらひらと振りながら颯爽とフロアを出て行き、姫川編集長は深いため息を吐く。

「急な展開になりましたね」
「無茶ぶり好きだから付き合いきれんが、発行するって決まっちまったものはしょうがない」
「高坂専務はお任せするっていってましたけど、場所はどこにするんですか?」
「宇の島海岸近くの街にする」

 そこってK県にある有名な海岸地域で、大学生の頃は海水浴で何度も訪れたことがある。

 散策するエリアも複数あって見所が満載だし、様々な雑誌でも読者が注目する場所として取り上げられるけど、まだ私が知らない場所ってあるのかな?

 姫川編集長のことだからきっと考えがあって選んだと思うけど、私は通常の進行と並行して季刊の制作に取り組めるのかなと不安が残ったままだ。
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