私が恋した男〜海男と都会男~
「今回は他の部署も同じ雑誌に載るから、色々と考えねーとな…。おい、水瀬!!」

 すると姫川編集長は何か思いついたのか、水瀬編集長に声をかけた。

「何か思いついた?」
「お前んとこ、水着のページを作るんだろ?撮影に適した場所を教えるから、見返りに俺らのページに水着を着たモデルを出させろよ」
「こりゃまた…、姫川も高坂専務みたいに言ってくれるね。姫川が勧める場所なら信頼できるしモデルを貸すけど、撮影スケジュールはうちらの部署を優先にして欲しいな」
「じゃあ、後で撮影場所の連絡先を伝える。今回の季刊は、宇ノ島海岸のエリアをテーマにしていくぞ」

 水瀬編集長は苦笑いしながらも姫川編集長と季刊について話し合っているけど、どんどん方向性が決まっていくスピードに取り残されている私たち社員がいることに、この2人は気づいているのかな?

「姫川編集長、展開が早くて追いつけないのですが……。どうして私たち(Focus)のページに、水着を着たモデルを出すんですか?」
「お前さ、想像してみろよ?スーツを着たおっさんが海の家でラーメンすすってる姿なんて、暑苦しくて仕方ねぇ」
「…………暑苦しっ」

 私はスーツを着たおじさんが汗をかきながらラーメンをすす姿を想像したら、一気に暑苦しくなった。

「おい、ちょっと話があるから一緒に廊下に出ろ」
「分かりました」

 話ってどんなことを話されるかされるかと思いながら一緒にフロアを出て廊下の端っ子にくると、姫川編集長は壁に寄りかかった。

「今回の季刊の特集、お前が書いてみろ」
「私が?!特集だなんて早すぎますよ!」
「これは命令だ」

 いつも何度もダメ出しを受けて突き返されてるし、出版社の部署を跨いで発行される雑誌のページの一つを任されるんだもの、失敗なんて出来ないよ。

「俺はお前ならやれると思っているから、言ってるんだ」
「姫川編集長…」

 普段から厳しく言われてばかりなのに期待を持たれた言葉は初めてで、その言葉がしり込みしていた私の背中を押してくれたような気がした。

「特集…、書かせて下さい!」

 私は姫川編集長をまっすぐと見上げて宣言し、四つ葉出版社全体で発行する雑誌の一つの特集ページを任されることになったのだった。
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