私が恋した男〜海男と都会男~
 高坂専務の提案で夏に季刊が発行されることが決まってから数日後、今日は世間では花の金曜日で夜は出かけるぞって言われているけれど、四つ葉出版社の編集部フロアはそれどころじゃない。

 私は姫川編集長のご指名(半ば強制ととれる命令)で四つ葉出版社が新しく発行する季刊の特集ページの一つをメインで書くことになったけど、これから発売される『Focus』の進行と並行で進めなくてはいけなくて、抱える仕事が一気に増えた。

 両方の雑誌に遅れが生じないように終電間近までキーボードを打ち続ける日々を過ごしているので疲れがひどく、姫川編集長も季刊の進行をまとめる立場なので連日徹夜をしているみたいで目のクマがすごい。

 ときどきスポーツ部から栄養ドリンクの瓶の差し入れをもらうんだけど、その瓶がスポーツ部のゴミ箱に大量に入っているのを見ると他の部署もギリギリな精神状態なんだなって思う。

「今回の取材先の地域の住所、渡しておく。週明けから現地に向かうからな」
「分かりました、ありがとうございます」

 私は姫川編集長から一枚のメモを受け取って書かれてある住所を確認すると『K県F市○○―××』とあり、ここが今回季刊のテーマに取り上げる街の候補なんだ。

 そうすると予め現地の情報も調べておけば週明けの取材にバタバタせずにし、ある程度は知識あったほうがいいかもしれないよね。

 私はパソコンで検索サイトを開いてメモに書かれてある住所を入力すると、画面には幾つかの検索結果のリンクが表示されたので、一つ目の結果をクリックすると海沿いの街の画像がいくつも画面に映った。

 その画像には海岸の砂浜や線路を挟んで住宅がポツポツと点在し、きっとここに住んだら毎日海を見れていいよなぁ…、ここにどんな人たちが暮らし、どんな生活を送っているんだろうか、何故この街に住むことを選んだんだろうと頭の中に取材をしたい項目が浮かんでくる。

 明日の土日が休みだからそこに行けばきっと自分が伝えたい街の魅力が見つかるし、姫川編集長に提案するときにも役立つだろうから、週末はK県F市へ行ってみようっと。
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