私が恋した男〜海男と都会男~
「いただきます」

 海斗さんはお握りを一口食べ、そして野菜炒めが入ったタッパーの蓋を開けて中身を食べ始めた。

「お味はどうですか?」
「不味くはない」

 海斗さんが野菜炒めとお握りを交互に食べる姿にホッとし、私は海斗さんの向かいに座ってその姿をじっと見る。

 野菜炒めの味付けはシンプルなものだけれど、昨日の夜にとても綺麗な景色を見せてくれたから、少しでもそのお礼を込めたから伝わるといいな。

「ごちそうさん。俺、荷台を片付けてくるから」

 海斗さんはそう言うと、事務所を出ていく。

「海斗の奴、相変わらず素っ気ないなぁ。嬢ちゃん、気にしないでくれよな」
「あれでもいい奴なんだよ」
「ぶっきらぼうなのは分かりました」

 ここにはたった2日しか過ごしていないけれど、海斗さんがぶっきらぼうなのはもう分かったし、落ち込んでいた私に海を見せてくれたり、ヒデ子婆ちゃんやヨシハラのお爺さんや漁師さんたちに好かれているから悪い人ではないと伝わってくる。

 私は外で作業をしている海斗さんの仕事姿を、いつまでも見続けていた。
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