私が恋した男〜海男と都会男~
「次は写真の確認と、巻末ページの校正だよね」

 一つ一つ作業を確認しながら進めていると、お腹がぐぅっと鳴った。

 しまった…、周りに聞こえてないよねと姫川編集長の方を見ると、さっきと変わらずにキーボードを打ち込んでいるから、そこまでお腹の音が聞こえていなくて良かった。

「さっさと飯でも買いに行けよ」
「聞こえてんじゃないですか!!」
「席が近いから聞こえただけだ」
「………買いに行ってきます」

 鞄から財布を取り出して編集部を出て、足音を強くしながらロビーを通って四つ葉出版社を出て、近くのコンビニに向かった。

 もー、お腹の音が聞こえているなら突っ込んでくれてもいいじゃない!聞こえてないと思って、安心しきっていた自分が恥ずかしいじゃん。

 コンビニに入って夕飯はどれにしようかと商品棚を見ていると、お弁当はちょっと飽きているし、インスタントを食べたい気分でもないし、やっぱり海斗さんたちが作ってくれた美味しい料理をもう一度食べたいなぁ。

 1人暮らしだと食べる物がコンビニか外食になるし、残業しているとお腹に溜まるものは避けたいから、サンドイッチとサラダぐらいにしておこうかな。

「後は飲み物ぐらいかな」

 コンビニの奥にある飲み物の棚からペットボトルを手にとってレジに向かうと、スウィートが並べられている棚に目が留まり、今朝の姫川編集長の顔が浮かんだ。

 あの目の下のクマは疲れが溜まっている証拠だし、甘いものを食べて少しでも疲れがとれるなら、差し入れをしてみようかな?ケーキ類は好みがあるし、ここはオーソドックスにプリンにしてみようっと。

 カゴに自分の分も含めてプリンを2つ入れて、レジで会計を済まして編集部に戻ると、フロアにいるのは姫川編集長だけしかいなくて、当の本人はキーボードに触らずに缶コーヒーを飲んでいる。

 普段、残業の時間帯でもそれぞれの部署の人たちがいるから、しぃんっと静かなフロアは初めてだ。
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