私が恋した男〜海男と都会男~
「海斗、大丈夫か?退かすから待ってろ。おい、誰か手伝ってくれ」

 男性が海の家から飛び出してきて、私たちの状態を見て驚いている。

 男性の声によって集まった皆さんが海斗さんの背中に乗っている木材を退かしていくと、海斗さんは起き上がって、私の手を握って身体を起こしてくれた。

「あんた、怪我は?」 
「海斗さんのおかげで、怪我はしていないです」
「そっか。ここに砂がついてる」

 今までぶすっとしていた海斗さんが笑っていて、私の頬についた砂を手で優しく払ってくれて、海斗さんも姫川編集長のように口は悪いけれどこうした優しさがあるから、2人は兄弟なんだと思った。

「すごい音が聞こえたが、何かあったのか?」

 すると姫川編集長が海の家から出てきて、こちらに来た。

「あんた、危なっかしいから、もうここに来るな」
「えっ?」

 急にどうしてそんな冷たい言葉で言うの?さっきまであんなに笑っていたのに……、海斗さんの言葉で一気に空気が冷えて、胸がズキッと痛んだ。

「まだ仕事が残ってるんだ、帰るぞ」
「…………分かりました。皆さん、ご迷惑お掛けして申し訳ございません。また3日後からお願いします」

 私は男性や海斗さんたちに向けて頭をさげ、姫川編集長と共に海の家から離れていった。

「……」
「……」

 浜辺を後にした私たちは一言もしゃべらず宇ノ島近辺を歩いていて、傍を通る車の音ぐらいしかしない。

 どうしよう、何か話した方がいいよね?海斗さんに助けてもらった経緯を話すべきかな?海に落ちたことを黙っていて怒ったし、ここは報告しなくちゃまずいよね。

「姫川編集長、あの―…」
「行きたい所があるから、ついてこい」
「待って下さい」

 姫川編集長は私の話に聞き耳持たずに早足で歩き、一体行きたいとこって何処なの?
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