あなたが作るおいしいごはん【完】
場所が違っても
彼がこうして
私の分のご飯を用意してくれて
私はこうして
彼のご飯を毎日食べられて
私は本当に恵まれている。
……ああ…好きだなぁ。
彼と婚約してから
初めてキスされてから
日に日に私は
彼の優しさや微笑みにドキドキして
彼の料理に対する愛情に
彼の料理を作る仕草に
素材を扱う繊細な手と指に
段々惹かれて
堕ちていくのを感じ
今では何もかもが大好きになっていた。
この事務所へ入る前に
キッチンスタジオを通り過ぎる際に
廊下の窓から彼が見えた。
『…○○さん、そんなに力まないで。
肩に力入ってますよ。』
『…△△さん、その調子です。』
彼がテーブルごとに様子を見て回り
生徒さんを指導している姿が…。
立ち止まって見惚れてしまうほど
にこやかに微笑む姿が
スマートな出で立ちが
本当に素敵だった。
でも…少し嫉妬してしまった。
彼の生徒さん達に…。
彼と同性の生徒さんなのに
40〜50代の
明らかに年輩生徒さんなのに
仕事だってわかってるのに
それぐらい私は……彼に堕ちていた。