あなたが作るおいしいごはん【完】
『…萌絵ちゃん。』
再び私の名前を呼んだ彼は
頬を撫でたまま口を開いた。
『…いきなりだけど
俺は、この仕事をしているとね
食材一つ一つに色んな食べ方
つまり…調理法があると言う事や
それによって
色んな味わいがあるんだって事を
日々教えられるんだ。』
「……えっ!?」
確かに…いきなり何の話?
食材?食べ方?味わい?
「……カズ兄ちゃん?」
どう言う事…?
話の意味がよめずに
私は頬が触れられたままの状態で
ドキドキしたまま軽く首を傾げた。
すると、彼はクスクス笑った。
『…萌絵ちゃん、顔に出てる。
いきなり何の話?って顔してるね。』
「…あっ!!あの…ごめんなさい…。」
少し慌てる私に
彼は優しく首を横に振ると
『…いいよ…俺の方こそ
確かにいきなりでごめんね…。
例えがわかりにくいかもしれないけど
長くなるかもしれないけど
それ食べながらでいいし
わかるように話すつもりだから
聞いてくれる?』
そう言って確認を求めた。
私は頷いて
「…はい。聞きたいです。」
そう返答すると
『…ありがとう。』
彼は安心したような表情を浮かべた。