あなたが作るおいしいごはん【完】
彼は私の頬から手を離すと
『…いいよ…萌絵ちゃん。
それ食べながら聞いてね。』
そう言って
ラッピング袋に残っている
《どら焼き》を指差した後
ゆっくり顔を前に向けて口を開いた。
『…さっきの話だけど
食材の……そうだなぁ…。
例えば、野菜のキャベツや人参は
生のまま刻んだり、スライスして
《ハンバーグ》《フライ》《生姜焼き》
等のメイン料理の付け合わせとか
ドレッシングやマヨネーズをかけて
サラダとしても食べられるけど
塩コショウや色んな調味料で
味付けして炒めると
生のまま食べるのとは
また違った食感と味わいがあるよね?』
「……うん、そう…だね。」
『…でもね
他にも煮物にしたり
スープで煮込んだりすると
生のまま、炒めた状態とはさらに違った
食感と味わいもある。
…だから、その事がわかっていく中で
食べ方や調理法は
決して一つだけじゃないから
生のままだと食感と味が苦手で
食べられなくても
炒めたり、煮たりして加熱すれば
普通に食べられる場合もあるって
事についてはわかるかな?」
まだ彼の話の意味はよめないけど
話している事はわかるから私は頷いた。