あなたが作るおいしいごはん【完】


ーー『…2年間あるんだから
ゆっくり焦らず少しずつ
好きになってくれたらいい…。』ーー


確か私にそう言ってくれたけど

私はもう多分彼が…。


……あなたが好きなのかもしれない。


だって…さっきから私…。

この胸の高鳴りが

何だか半端ないほど奥底から

ドクンドクンと言ってるから…。




でも、まだまだダメだと思う。



まだまだ彼について

私は知らない事が多いと思う。


彼と私は無理やり婚約させられたし

私が元カレと一悶着あった事を

彼は父や秀和社長から聞いているから

彼が父の恩の為に

何の取り柄もない私に

ただ…家族同士の付き合いで

恋愛感情なんて特になく

遊びに行ったり、差し入れを貰っては

お返して…の間柄だった私との

政略結婚を受け入れたのだから

彼は私を嫌いじゃないけど

かと言って好きじゃないと思う。

多分今は無理やり好きになる努力を

してくれている過程の中に彼はいる。


それを踏まえて

彼がああ言ってくれた以上

私は彼にそう安々と

『…あなたが好きになった。』なんて

言ってはいけないのかもしれない。
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