あなたが作るおいしいごはん【完】
***
ドキドキしている自分を抑えるように
私が代わりに食器を洗った後
食後の紅茶を入れようと思い
「…カズ兄ちゃんの分の紅茶も
入れておいていい?」
と、リビングのソファーに座って
何かの用紙に目を通している彼に
声をかけた。
すると
『……。』
一瞬の沈黙の後、用紙を置いた彼が
こちらをチラリと見て立ち上がると
キッチンにいる私に向かって
スタスタと近づいてきた。
…えっ!?何?
そう思った時には
『…萌絵ちゃん。』
彼に名前を呼ばれただけでなく
微笑みを浮かべながら
なぜか至近距離で見下ろされていて
あの結納の時のように
彼の細長く繊細な指が私の頬に触れ
スリスリと優しく撫でられていた。
…ドクン。
頬に体温を感じて私は目を見開いた。
抑えていたはずの胸の高鳴りが
再び私に訪れた。