あなたが作るおいしいごはん【完】
微笑みを浮かべながら
彼は私の頬を優しく撫で続ける。
いつ見ても細長く繊細で
きちんと手入れをしているのか
荒れのない、しっとりした指先。
彼はいつもこんな優しい手つきで
たくさんの食材を扱っているんだ…。
数々のおいしいご飯は
この手から作られ、生まれているんだ。
こんなに優しい手なら
扱われる食材達も凄く幸せだと思う。
さらにもっとおいしくなろうと
旨味を出したくなると思う。
だから彼の作るご飯には
愛情がこもっていて
とてもおいしいんだ…。
ドキドキはやまず
この高鳴りが聞こえやしないかと
恥ずかしさと緊張で俯きそうになると
『…俯かないで。』
行動がよまれていたのか
ハッとして顔を見上げた。
そんな私を
彼はクスッと笑いながら口を開いた。
『…ねえ、萌絵ちゃん。
君はずっと俺を
“カズ兄ちゃん”てよぶけど
いつになれば
その呼び方を卒業してくれるの?』
「…えっ!?…カズ兄…ちゃん!?』
微笑みながらもやや低い彼の言葉に
「……カズ…兄…ちゃん?」
私は困惑し始めた。