あなたが作るおいしいごはん【完】

私が父の娘だから

元カレに泣かされた私を

心配していたと言う父の心情を

その場にいた彼が偶然聞いたから

彼は優しいから

父の娘である私の事を

可哀想だと思って

きっと同情したと思う。

そして

いつの間にか決まっていた

この結婚話を父から提案された時

彼は私を小さい頃から知ってるだけで

別に私の事なんて

好きでも嫌いでもないけど

父の為に恩返しを買って出たんだと…。

きっと…そう…そう決まってる。

私が父の娘だから

一緒になってるだけなんだもん。

彼は父への恩と私を重ねてるだけ。

私が父の娘でなければ

彼は私を見向きもしないと思う。

彼は父の娘なら誰だっていいんだから。

恩返しの為に彼は魂を売り払った。

そう……すべて何もかも

父への恩返しの為……。

優しい人だから、わかる…私には。




……ねえ、カズさん。

私はあなたが好きだけど

あなたは今は少しでも私を好きだと

思ってくれるようになった?

私はあなたがわからないよ……。





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