あなたが作るおいしいごはん【完】
『…アルバイト先見つかったよ。』
そう言って彼に紹介されたのが
今のレナ店長のお店だった。
『…シフトはなるべく平日で
俺の教室の日に合うように
組んで貰う約束を
既に取り付けてあるし
ここは俺のスタジオに近いから
バイトが終わったら必ずビルに寄る事。
勝手に帰る事は許さない。
…ちなみに萌絵のシフト表は
毎月報告して貰うようになってるから
俺に嘘ついても無駄だからね。』
「…なっ。」
何だか自分の意志と関係なく
バイトもシフトも強引に決められて
「…ちょっと…私の意志は?
まるで何だか…監視されてるみたい。」
俯いて少しだけムッとした私に
『…ごめんな。
でもね、厳しいようだけど
萌絵は俺の婚約者だから
大事なお姫さまに何かあったら
君を任せてくれた靖雄さんに
申し訳がたたなくなるからね。』
彼はそう言って微笑みながら
私の頭を撫でた。
頭を撫でられるのは好き。
でも、口を開けば
いつも彼から聞く父の名前に
…また、パパか。
彼が私を心配してくれてるのではなく
パパに頼まれた事が大半なんだと
もう言い返す気にもなれず
私は胸に複雑な想いが突き刺さった。