【BL】君と何処へ行こうか?
彼の身体を一度床に寝かせ、机の引き出しを開けた。
そこには護身用の拳銃が一つ。
それを懐に入れ、彼を横抱きに抱える。
まだ少し温かい唇にキスをした。
初めてのキスは血の味がした。
「………行こう。」
彼が守りたかったものを守る。
それが唯一僕に出来ること。
この世に憎しみを残さない。
それが僕の役割だ。
組長が死んだとなれば必然と犯人探しが始まる。
いずれは反発派の仕業だと分かるだろう。
そしたらこの澤村組は真っ二つに分かれ、内戦が始まる。
それは彼が一番恐れることだ。
彼の身体を抱いたまま、僕は屋敷を隈無く歩いた。
堂々と血濡れた身体を抱いて。
足を止めたのは中庭。
松の木の下に彼の身体を横たえた。
周りは余すところなく組員に取り囲まれている。
「おい!どういうことだ!?」
一人の男が前のめりになりながら叫ぶ。
「見たままだよ。組長は死んだ。ーー僕が殺した。」
「てめえ!!!組長からの恩を仇で返したってのか!?」
「恩?そんなもの最初から感じてない。僕はヤクザなんて大嫌いなんだ。」
ねえ、聞こえてる?
アンタの意思を継ぐのは僕じゃない。
こんなにもたくさんの人の中で、アンタは生きてる。
「許さねぇ!!!」
怒声を合図に一斉に僕へと向かってくる。
弾の数は6発。
反発派の主軸は6人。
絶対に外さない。
まずは2発。
1発目は心臓に、もう1発はこめかみに当たり、二人が倒れたのを確認する。
「この野郎ぉ!」
向かってくる拳の先に標的が見えて、引き金を引く。
弾が相手を捕らえたのと同時に、溝内が入る。
「くっ………」
一瞬呼吸を忘れたが、立っていられるから大丈夫だ。
あと、3人……
銃声が聞こえ、左足に痛みが走る。
撃たれ先には標的がいる。
わざわざ出てきてくれるなんて、優しい人だ。
恐怖に歪んだ眉間を撃ち抜く。
次の瞬間には叫び飛び掛かってくる男。
どうやら僕が反発派だけを殺していることが分かったらしい。
少しは賢いみたいだけど、今更だ。
大雑把な攻撃を流し、胸に付き当てた拳銃のトリガーを引いた。
その瞬間、背後から腹部辺りにナイフが貫通した。
そのまま刺してきた男の腕が首に回る。
「……そこまでしてあの男の思想を守りたいか?」
聞き覚えのある声が小さな声で囁いた。
反発派のリーダーをやっていた男だ。
「どうしてあんな男に命を懸ける?無駄死にだ。」
「……無駄じゃない。これは僕が決めたことだ。これが僕の愛し方だ。」
「だったら仲良く地獄で愛し合ってな。」
ナイフが更に深く突き立てられる。
「くっ…………」
「痛いだろ?苦しんで死ね。あの男みたいにな。」
「アンタもね!」
突き立てられた、ナイフを横にずらし、思いっきり身体を捻る。
「お前ーー自分で…ーー!」
裂けた身体が倒れきる前に銃口を男に向ける。
「ま、待て!落ち着け!」
「ばいばい、またあとでね。」
口に銃口を詰め込み、引き金を引いた。
迷いなんてない。
最後の1発が火を吹いたことを見届けて、僕はそのまま地面に倒れる。
腹の半分が裂けている。
ドクドクと血が溢れているのが分かる。
意識が遠退く。
けどまだダメ。
僕はいつも隣に並ばなきゃ。
地面を這うように、僕は松の木を目指す。
「……こいつこの状態でまだ生きてるのか?」
ごめんね、僕はきっとアナタと同じ場所には逝けないけれど………。
「…………いや、もう死んでるよ。」
心はずっと共に………。
意識のない身体は地面を這い、松の木の下に眠る身体と寄り添うように並んだという。