Tomorrow Train
Advance-前進-
「襟、折れてますよ」
登校する電車の中でふと声を掛けられた。
「はい?」
振り向くと、背広を着た男の人がいた。
「いや、だから襟。」
男の人はぶっきらぼうに私の襟を指差した。
確かにセーラー服の襟が、見事にひっくり返っていた。
「あ、ありがとうございます」
と答えたものの
知らない男の人に注意されるのは
いい気分ではない。
よく分からない恥ずかしさと
なぜか怒りが込み上げてきた。
手をいっぱいいっぱいに伸ばして
襟を直す。
「間もなくホームに電車が参ります-…」
やっと電車がきた。
小さくジャンプして気を取り直す。
これ、私の癖なんだよなぁ。
朝の風を思い切り吸い込んで
私は混みすぎた空間に足を踏み入れる。