コイツ、俺の嫁候補。
7時半って、花火が上がる予定の時間だったんだ。

ここは二人だけの特等席。

那央の目的はこれだったんだね。



「きれーい……! ちょっと時間押してたみたいだね? 間に合ってよかっ──」



ぐい、と後頭部に添えられた手で頭を引き寄せられ、言葉が途切れる。

そして──那央の唇で、あたしの口が塞がれた。



「っ──!!」



これ……

キ、キ、キス……っ!?


息の仕方も、目を閉じることも忘れて放心状態。

ほんの数秒で、わずか数センチほど唇が離されると。

那央はあたしの頭を支えたまま、男のくせに色っぽい瞳であたしを見つめ、艶めかしい笑みを浮かべた。



「もらっちまった。縁のファーストキス」

「!! なっ、なん……!?」



何でファーストキスだって知ってんの!?

と言いたいのに、唇が麻痺してしまったかのように言葉にならない。


けれど、那央にはあたしの言いたいことが伝わったようで。


「縁にそんな経験がないことくらい察しがつくって」

と、悪戯に笑った。

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