コイツ、俺の嫁候補。
「どうした?」

「……先輩、彼女がいた」



俯くあたしを不思議そうに覗き込んだ那央は、ぴくりと反応して動きを止める。



「さっきバイト先に先輩が来たんだけど、女の子と待ち合わせしてたみたい。
……でも、考えてみれば先輩みたいな人に彼女がいない方がおかしいよね! だから、ショックは受けたけど妙に納得してるっていうか」

「縁……」

「それに、あたしは本当に先輩のこと好きだったのかなって、ちょっと迷い始めてたの」



気の毒そうな顔をする那央に、あたしは自然と胸のもやもやを吐き出していた。

那央なら、ちゃんと聞いてくれそうな気がして。



「単なる憧れだったのに、それを好きって勘違いしてたのかも……って。自分でもよくわからなくなっちゃった」



はは、と渇いた笑いをこぼすあたしを、那央は笑いもせずに見ている。

きっと呆れてるんだろうな……。

そう思った瞬間、再びあたしの手が握られて。



「? な、お──」



何かと疑問に思う間もなく、ぐいっと引き寄せられたあたしは、彼の腕の中に収まっていた。

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