コイツ、俺の嫁候補。
入り口近くの定位置にはヤンキー二人が並んで座っていて、テーブルにノートを広げている。

どうやら課題か何かをやっているらしいけれど、スマホ片手にお喋りしていてまったく進んでいる気配はない。



「え、あいつが!?」

「らしいぜ。意外だよなー」



何の話をしてるんだか。

どうせくだらないことなんだろうけど、陸の驚いたような声が静かな調理室に響いて、嫌でも耳に入ってきてしまう。



「あんな爽やか好青年っぽく見えて、樋田も節操がねぇんだな」



──は? 樋田って、樋田先輩!?

節操がないってどういうこと!?


何その話……気になる。気になり過ぎる!

あたしは弾かれたように席を立ち、ずんずんとヤンキー二人に歩み寄った。



「ねえ、今のって樋田先輩の話?」

「あ? だったら何だよ」

「あたしにも聞かせて」

「何でお前に話さなきゃいけないわけ」



相変わらずガラの悪い二人の前には、空欄だらけの英語のプリント。

これ、あたしらも昨日やったやつだ。

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