桜が咲く頃~初戀~
『この子の名前は私の初恋の人から貰ってみた』

そう綾香は言うと空に右手の人差し指で名前の漢字を書き始めた。


『敬涼』

そして綾香は圭亮から息子の敬涼を引き離すと自分の腕に向きを変えて抱き直し


『あっ、‪私黙ってたけど。この子は圭の子供やないんよね。初恋の人の名前付けたとか聞いたら旦那焼きもちより怒るかも』

そう言って肩を小さく縮めて笑った。


『そうだね』


圭亮が眉間に皺を寄せて困った顔になったとき綾香は笑いながら。


『大丈夫、大丈夫、1文字は旦那の名前から取ってるから』


そう言うと綾香は敬涼を抱いている腕をいっぱいに伸ばして高く上げた


敬涼はそれが嬉しいのかキャッキャと鈴のように笑った。

『つか?綾香。この子俺の子供やないとか。浮気とかしてたって事?』


と静かに聞くと綾香はモジモジしなが


『うん。しとったよ。だって、圭もずーっと浮気していたでしょ?』


と言いながら悲しげな顔を見せた


『俺。浮気なんかしてないよ』


圭亮が呟くと綾香は左腕に敬涼を抱え直してから右手を自由にさせて圭亮の左胸を人差し指で指した。


『ここでずーっと浮気しとった』


そう言った。
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