桜が咲く頃~初戀~
戸惑いはしたけれど、朝にバスで大輝とも再会し昼間に雄一とも再会し気持ちがこの街に戻って来ていたのもあり、綾香の話をしていた事が圭亮は気持ち的に楽にさせてくれていた事に感謝を感じた。


しかし、あの日綾香との事は宙ぶらりんなままで、まだ完全には終わって居なかっ事実もある。圭亮は綾香と綾香に抱かれてキョトンとした顔で圭亮を見詰める男の子をじっと見た。


『あの、綾香、俺あの時…』

圭亮がその先の言葉を繋げようとした時。綾香は自分に抱かれている男の子を圭亮に無理に渡して


『ほらぁ、パパだよ〜』

と悪戯に笑いながら言った。そんな綾香の顔は圭亮と暮らしていた頃より少し太ったのか?柔らかく見え圭亮は綺麗になったと思ったが、綾香に渡され今、圭亮に抱かれている男の子の泣き出しそうな顔を見て圭亮は胸が痛くなった。男の子はミルクの柔らかくいい匂いがしていた。




『綾香…やっぱりあの時』

綾香が部屋を出て行き、荷物が無くなった部屋で「ホッ」としていた自分を責めそうになって息が苦しくなって来た時


『この子の名前何て言うと思う?』


綾香は背の高い圭亮を見上げながら、先程と同じ悪戯な顔で口を右上に斜めに上げるとニヤリと笑った


『分からない』

圭亮はまた、男の子の泣きたいけれど泣けない感じを顔と身体をモジモジと動かしている男の子を見つめた。

色が白くまん丸で赤くした頬っぺたを膨らませ口を尖らせ圭亮に抱かれているのを我慢している様な男の子は気の強い綾香に似ていて負けず嫌いな快活な顔をしていた。



『けいりょう』


綾香はそう静かに言った。その名前に反応して圭亮は目を大きく見開いて綾香を見た。


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