桜が咲く頃~初戀~
圭亮は綾香の背中をしばらく見つめていたけれど綾香の言った


『1番好きな人とは一緒になれないらしいね』


の言葉が胸を押上げた


『1番好きな人とは一緒になれない』


と呟くと圭亮は香奈に会いたくなった。少し考えてから圭亮は香奈が居るであろう伊藤のおばぁちゃんの家の縁側を目指して実家とは違う田圃の畦道から歩道に出ると。歩き出した


しっかりと、ゆっくりと前に踏み出される自分の足を1度も止める事も無く。幼い頃の遠くの思い出の中に自分の想いを置いていてはいけない事に気がついたのだ。

綾香と話をした事で、2人の胸を締め付けていた物から今しがた解放されたのだ。


『されど空の高さを知る』

そう圭亮は呟き、香奈への気持ちを想いながら心なしか高鳴る自分の心臓の音と砂利を踏む足音が響く静かに冷たい夜に。ピリピリと刺す寒い風が気持ちよく感じられた。
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