桜が咲く頃~初戀~
告白
香奈はまだ寒い夜の風が冷たく震える様な縁側に電気ストーブを置き何をする訳でも無く圏外になっているスマホを開いたり閉じたりを繰り返していた。

SNSで知り合った『友達』とのやり取りを見返しながら。

どんな人か何て考えずに自分とは真逆な人になりきり楽しく過ごして来たあの『楽しい』と思えた時間が今は全く恋しいとは思わなくなっている。

空にはまん丸になる前のほんの少し欠けた橙色の月が周りに時折かかる薄雲で白々と輝いて何時もならチカチカと美しく輝く満天の星空を隠してしまっていた。

「何か、綺麗」

そう呟くと人恋しくなるのはこんな時なんだろうと思った。

色々な事があった。けれどおばぁちゃんの家に来てから香奈はそれ等を少し懐かしい気持ちで受け入れた。


そうして、胸の上に乗せているスマホを寝転んでいる頭の上に両手で伸びをするみたいに置くと両手の中指で押して少し遠くに置き直した。


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