桜が咲く頃~初戀~
紀子の味噌汁
香奈は圭亮の帰って行く背中を思い出して何時までも瞼の裏に焼き付けたままその夜はなかなか寝付け無かった。圭亮の想いを知ってどうすれば良いのか?考えては寝返りをうっていた。


紀子はそんな香奈を気にしながらただ黙って嘘の寝息をたてるしか無かった。

外で吹いている風がその夜はぴゅーぴゆーと鳴きながらふいておばぁちゃんの家の周りを包む様にくるくると回り出した。

寒の戻りが来ると夜のNEWSで言っていたのを思い出した香奈は布団を頭まで引き上げて包まり。いつの間にかゆっくりと眠りに落ちて行った。


香菜は朝早くに土間になっているおばぁちゃんの台所からトントンと何かを刻む包丁とまな板のリズムの良い音に目が覚めた。

香奈の鼻を、お味噌の良い香りがくすぐり中に入っているだろう?白ネギと大根と油揚げイリコと味噌の匂いを布団から目を閉じたましたまま胸いっぱいに吸い込んだ。


もぞもぞしながら布団を背中に乗せて四つん這いしながら土間への襖を開けた。

そこには紀子がいて玉ねぎを刻んでいた。その背中は何だかおばぁちゃんに見えた。

まだ重たい寝不足の頭をゆっくりと振ると布団を背中から下ろして起き上がった。


今日は何時もよりしんしんと冷えた朝になった。

隣でまだ気持ちよさそうに静かな寝息をたて彩未は寝ていた。



彩未の寝息は香奈の中の深い所を刺激するかの様な心地良い音となってまるで泡がぷくぷくと湧き上がるかのように香奈を誘っていたのが余計に香奈の瞼を落としそうになる。


彩未は少し口を開けて可笑しな顔になっていて香奈は笑ってしまった。

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