桜が咲く頃~初戀~
圭亮も香奈の隣で同じ思いを考え思い出していた。

あの頃とは違い香奈は圭亮の隣に静かに座り賑やかな中に混ざり一緒に声を出して笑っている。その近い距離にいる香奈の横顔を1度見つめてから徳利を左手で拾うと鉄郎に差した。この空気が何時までも続けば良いと思いながら。


食事も程々になり香奈と百合子はもう使わないであろうテーブルの皿を片付け始めた。

『あっ百合子おばちゃん。私が洗うからゆっくりしとってください』

と言った香奈に百合子はニコニコしながら

『うち、女の子いないからこうして一緒に出来るのが夢やったんよ。香奈ちゃんが家の圭のお嫁さんに来てくれたらおばちゃん嬉しいけんどねぇ』


と言ってニンマリと笑うと「うふふ」と声に出して笑いその後香奈と一緒に片付けをしてくれた。
「圭亮のお嫁さんに」と言われた香奈はその時全身が熱くなり毛穴からは変な汗が吹き出そうで顔は真っ赤になって身震いした。

百合子はそんな香奈の仕草に「満更ではないみたいね」と心で呟くととっても喜んでワクワクしてしまうのだった。


圭亮は片付けをしている香奈と百合子の並ぶ背中を少し酔って腑抜けそうな頭で忘れないように記憶の中に仕舞った。



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