桜が咲く頃~初戀~
『そうだと知ってた。ずっと。それが聞けて良かったよ。ずっと私も圭が好きだった。何時も大人しくて言ってはいけないとは思ってるけど香奈は陰気だったし。そんな女に圭は渡せないし絶対渡さないと何時も思った。何で圭は私みたいな良い女に魅力を感じないのか?って思って香奈にも圭の気持ちにもずっと嫉妬していたんだ。先に圭を奪えばどうにかなるって簡単に思ってたんだけどね。圭って単純そうだし流されそうだし』

と言うと『ぷぷぷ』と笑ってから顔を元に戻して

『そうやすやすとは人の気持ちを変える事は出来ない。無理だって分かった。私、香奈が凄く嫌い』

と綾香は泣きそうに顔を歪めると少しして無理矢理な笑顔を作った

綾香が腕に抱き抱える敬涼はずっとキョトンとしていたが。綾香の腕から仰け反ると香奈に両手を広げてにっこりと笑って『あーあー』と言った。その敬涼の仕草に綾香は微笑むと


『敬涼は香奈が好きみたいだけど...。』

と言って「はい」と敬涼を香奈に渡した。香奈は突然差し出された小さな男の子を受け取るとそっと胸に抱いた。香奈に抱かれた敬涼は両手を自分の太腿に挟んで香奈の胸にゆっくりと頭を預けて何処を見ているか分からない様な目をしてウットリとした。



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