桜が咲く頃~初戀~
圭亮のムキになった赤い顔を見ていると香奈は胸が小さく縮んで無くなって
しまいそうになった。
『ほんまか圭!バァの目ぇの黒いうちはな香奈に手ぇ出したらいかんよ』
そう尻つぼみに優しい口調になったおばぁちゃんはすました顔になって続けた。
『まぁ2人が好きおうとるなら話はべつやけんどねぇ』
おばぁちゃんは2人の小さい昔のころから気になり合ってる事はおみとうしだったのでそう言うと舌をペロッと出して悪戯に笑うと木綿の糸を辿り左手に編みかけの帽子と右手にかぎ針を持って静かに編み始めた。
香奈は何故かそんなおばぁちゃんの姿があの桜の樹で軍服を着た青年と出会った頃の幼い少女の様に見えた。