桜が咲く頃~初戀~
縁側
圭亮が話をしている間に香奈はパーカーのフードを深々と被り膝たてて胸に抱えて座っていた。ただ何度も頷いたりする以外は何も言わなかった。


『香奈ちゃん、寒いね』

圭亮は話が終わり、周りの空気の冷たさに腕を抱え込む様にして摩った。

『圭亮君。あんな私な見てん「コトダマ」全然怖くあらへんかった。バァちゃんが言ってたあの桜の樹は奇跡を呼ぶって』


そう言って香奈はボソボソと話した。何だか秘密にしなければならない様な気持ちがモゾモゾしてこそばゆい感じがした。

『あれからなんか?俺は何かあると必ずコトダマに話に行くようになった。コトダマが見えるのは子供の頃だけやとおもってたけど。今朝香奈ちゃんに会う前に……』


圭亮はそこまで話して口を閉じた。香奈はまた桜の樹の方を目を細めて眺めている圭亮の横顔を被っていたフードを左手で少し上げて見た。

子供の頃に見ていた圭亮の面影がそこに懐かしく有った。香奈は圭亮に気が付かれない様に急いでフードを被り直して胸に付けていた膝におデコを押し当てた。
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