桜が咲く頃~初戀~
彩未(あみ)の出逢い
何時の間にか眠りに落ちてまっていた香奈は朝の冷たい空気に少し身震いをして布団から出た。隣ではまだぐっすりと眠っている小さな妹彩未の寝顔がこんなに可愛いなんて1度も思った事が無かった香奈にとって彩未の顔は新鮮だった。

そう思うと胸がチクリと傷んだ


ーなんでこんなに可愛いのに虐めたんやろー


香奈は溜息を漏らすと紀子を起こさない様にそっと土間の襖を開けた。まだ三月の中頃の空気の張り詰めた冷たさが気持ちがいいと香奈は思った。

外に行き手洗いを済ませると今度はもう随分昔に塞がれた井戸の横に山からの湧き水を引いている止まることの無い水の蛇口に手を伸ばし顔をジャブジャブと洗った。何時もこの瞬間に香奈は気持ちが引き締まる思いがして好きだった。

空を見上げると霞んだ空気の中に青い優しい空が見えていた。


最近では所々の桜の樹にまだ硬い蕾が付いてもう春なんだと思うと香奈は懐かしい気持ちになる、

大きく深呼吸して背中を伸ばすと昨日取りすぎた大根を1本顔を洗った湧き水で洗い始めた。


『朝の味噌汁は大根とネギだけでいいかな?納豆あるし』

香奈は大根を綺麗に洗いながら独り言を呟いた。
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