ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
巡り会う孤独な星たち
 神さまはぼくをこの世界に残してくれたが、病はぼくの身体から離れることはなかった。それよりも幾分か進行しているのではないかと、正直錯覚することすらあった。





 ぼくは二十三歳になった秋の日、化粧品&貴金属を販売するちいさな店に就業した。
 黒張りの壁面。格子柄の床。店内奥に設置されたこじんまりしたカウンタ−では、ゲストのためにお茶をサ−ビスするというアットホ−ム感漂う店の営業担当。事務と接客担当の女性社員一名とアルバイトひとり、営業の先輩社員に滅多に顔を見せない髭面の社長と、少人数で構成された会社であった。


 店舗はちいさくとも店の外観は見たところお洒落なカフェ風で、毎日たくさんの若者で賑わっている。営業といってもなんら堅苦しいものではなく、来店して頂いたお客さまのアフタ−フォロ−が主な仕事で、掛け売りの集金業務や新しい化粧品のピ−ア−ルを一日やっていた。


 入社して一番初めに教わったことは、一月から十二月までの誕生石。ぼくはくる日も来る日も、英単語を覚えるかのように誕生石を暗記した。

「一月がガ−ネット、二月がアメジスト……三月が……え〜と、なんだっけなぁ? そうそうエメか。四月は直ぐに覚えられるんだけどなぁ」

 ダイヤモンド。覚えることはたくさんあって、そのダイヤモンドにしてもたくさんの種類があった。
 米粒のようなちいさなダイヤ。メレダイヤ。ちいさくともダイヤには変わりなく、①キャラの大きなダイヤには出来ない他の石を引き立てるその様は、まるで太陽の周りに輝いている星のようだ。


 プリンセス・カットにブリリアン・カット。カットの種類だけでもたくさんあって、おまけにピンクダイヤ、ブル−ダイヤ、白ダイヤと色や等級まで様々。ぼくはル−ペを片手にあたまを悩ましていた。
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