ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
 午後十時。

 覆い被さってくるまぶたを必死で擦り上げて見た大宇宙。地上から数十メ−トル近付いて見る空は、幼いぼくを飲み込んでしまいそうなほど真っ暗で、それでいてキラキラと輝く星たちに、ぼくはクラクラした。今、見えている星の輝きが遥か昔、それも自分の知らない時間軸に創られた輝きと知ったのは、それから何年も先のことであった。そしてその光り輝く星がぼくの視界に入るころには、その星が存在していないこともあるなんて、その頃の、いや、今のぼくですら理解しがたい時間と奇跡がそこにあった。

 寒空、肩を竦める。ぼくは精いっぱいに空を見上げて、見たことのないその星を探しさがした。

「あ、見えた」

「見えたぞ」

「きれい」

 周りから聞こえ出す歓喜の声。が、しかしぼくの視界の中には一向に姿を見せてくれない流れ星たち……。あせり焦るぼく。その星が、打ち上げ花火のように大きくて華やかだったら、きっとぼくにも見つけられたことだろうに。
 音も立てずに一瞬にその姿を消し去るシュ−ティング・スタ−。

(どこ? どこに見えるの?)

 結局その日、ぼくの視界の中に星が流れることはなかった。そして、それからの十数年という長い間にも、斜めに走る流れ星は、ぼくの前に現れることはなかった。
< 3 / 103 >

この作品をシェア

pagetop