ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
巡り会う孤独な星たち2
 タバコの煙が三上の顔を真っ二つに割るように舞い上がっていく。フロアからの喧騒。知らないメロディ。三上はぼくが妻帯者であるのもかまわずに、そをなことを言い出した。

「浮気しろってこと?」

 ぼくは机の上に有る三上のタバコを手に取る。三上はうっすらと笑みを浮かべて頷いた。

「既婚者に何言ってるんだよ」

 三上の提案にそう答える。

「でも柏原さんって、いつ奥さんと知り合ったん? 珠希さんと」

「え〜と、二十歳くらいだよ。確か。お前でもそんなこと聞いてどうするんだよ」

 三上のタバコを一本拝借して、深く煙を吸う。

「浮気とかってしないの?」

 珠希と出会って約十年。今でこそ無くなったが、付き合い出した当初、何度か遊んではいた。

「今はしてないよ」

 本当のことを言った。三上は椅子から身体を起こしてニヤリと笑う。

「ほな、別にいいっすよね。それに奥さん実家に帰ってるんでしょ、寂しいっしょ! いい娘見付け出して遊びましょうや」

 やたらとサイト遊びを勧める三上。ぼくのこころにも何かしらの感情が息吹始める。
 援交、出会い系、2ショットダイヤル……全てが当たり前の世の中。独り身の夜を考えると、我慢出来ない何かがゆっくりと動き出す。
 とどめに三上のことばが胸を突き刺した。

「なぁ柏原さん、二十歳くらいから奥さんとくっついて、この先二度とおんなを好きにならんと生きていく自信あるん? してはアカンことやけど、それもおとことして辛いやろうに」

 三上の上手い喋くりにほんろうされていく。リズム感のいい関西弁がそうさせるのだろうか。

(少しくらいならいいかも……)

 こころが動いていく。あたまの中に独りきりの部屋が浮かび上がってくる。冷たい部屋、会話の無い静かな空間。
 寂しい気持ちがあふれ出る。

 ぼくは首を縦に振っていた。
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