ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
 黒川珠希。
 三つばかし年上の彼女とは、友人の紹介で知り合った。
 人との出会いなんて、偶然だけども、そこに何かしらの目に見えないものがあるのだろうか? 軽い始まりはいつしか深くて、大きな絆を作り上げていたみたいだ。
 珠希。幼げな顔立ちだが意外とシッカリ者の女子大生で、現在は就職活動の忙しい身。そんな慌ただしい毎日でも、ぼくの顔を見に病室に足を運んでくれる。
 ぼくはベッドから重たい身体を起き上げて、枕元にあった週刊誌を斜め読み。クダラナイ内容。パラパラとぺ−ジを飛ばしていく。

「うん。明日も検査が有ると思うんだけど、まだ詳しくは知らされてないよ」

 そう言ってリンゴをひとつ口にしたところに、ピンク色の白衣をまとった看護士が次の検査の説明にやって来た。
 お決まりのように体温&血圧測定。しばらくの間、珠希は席を外してくれる。 テキパキと測定する看護士。腰掛けOLの事務作業のようだ。
 血圧測定が終わり、腕に巻かれたマジックテ−プを外しながら体温計と睨めっこ。

「血圧、体温共に異常なしですね。柏原さん、明日はMRI検査です」

「またMRIですか?」

 寝ているだけの検査だが、耳元で連続的に大きな機械音がして、おまけ閉所恐怖症のぼくには堪らなくつらい検査。この病院に入る前、ぼくは医学センタ−という病院で、そのMRIに乗って検査を受けていた。そのとき、生まれて初めてその検査を受けたのだが、これが結構辛くて、ぼくは看護士に問いただした。

「そうです。この病院のMRIでは確か検査の方はまだでしたよね。こちらでもう一度検

査の必要がありますので、よろしくお願いします」
 看護士はそういって部屋を後にした。ぼくはベッドから起き上がり、時間を潰していた珠希を見付け出して声を掛けた。

「珠希」

「あ、省吾、終わったの?どうだった検査、明日の検査は?」

 珠希は病院ロビ−の大きなソファに腰を掛けて雑誌を読んでいた。周りにはたくさんの患者に連れ添いの人々。ぼくは珠希に並ぶよう隣に腰を下ろした。
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