変わりゆく華たち 第一幕 散ル華




「…っ…ぐっ……」



暫くすると、沖田のうめき声が聞こえてきた。




「っ!?総司!!」



斎藤は俺を睨むとすぐに止まった足を動かし、
沖田をゆすり意識の確認を取った。



俺は“床に刺さった”刀を引き抜いた。


沖田に向けておろした刀は、心ノ臓を突かず、左脇の開いている部分に向けて刺した。




「うっ…」



沖田は呻き声をあげるだけで、ぎゅっと閉じた目を開かない。



そんなに強く蹴り上げたのだろうか。


…力加減、次からは気を付けないとな。



そんな事を考えながら刀を鞘に戻した時、



「―――何事だ」



「伊織…さん?」



威圧のある声、そしてか細い声が道場の外、…入り口から聞こえた。




「隊士から連絡があって来てみれば、テメェは一体何してるんだよ。



なあ、神崎伊織。



うちの大切な隊士に
何やってくれてるんだよっ!!」



土方の怒りの声が頭に響いた。



「っ、総司くん!!」



藤堂は沖田の姿に気が付いたらしく、沖田の元へ駆け寄った。



「何って…沖田と“死合”をしただけだが?」



俺はそう言いながら土方の隣をすり抜けようとする。


沖田との条件付きの死合は終わったから。



「待ちやがれ」



「おっと…」



けど、土方はそれを許してくれないらしい。


自分の腰に差していた刀を鞘ごと抜いて、入口を塞いできたから。




< 84 / 108 >

この作品をシェア

pagetop