上弦の月


「どこいくのー?お酒もケーキもあるんだからさ、楽しもうよー!」


去ろうとした私の腕を掴んで引き留めた。


「お酒あまりつよくないので、遠慮します」

「気にすることないよ!僕が家まで送るし!!」


そう言って周りにいた他2人も私にお酒を勧めてくる。


「あの、ほんとわたしお手洗いにも行きたいので…失礼したいんですけど」

「本当〜?逃げないよね?戻ってくるよねー?」

「えぇ…」


田中さんの手からは少し手汗を感じる。

手汗は “あの時” を思い出すから嫌いだ。


気持ち悪い…。



「金村さん?係りの人が呼んでたよ」

「へ?!」


突然後ろから声がしてびっくりして気の抜けた返事になってしまった。

恥ずかしい…。



「廊下と方にいると思うんだ、いこうか」

もう一つのわたしの手を彼が掴み引っ張って行く。


田中さんの手からはあっさり解放されて廊下に出た。



「あの…係りの方は?」

「あぁ嘘ですよ。困ってるみただったんで」



最初は年齢がバレたのかと思った。

だけど途中から彼はわたしを助けるための嘘だと気づいてた。
でも、照れ隠しでこんなこと言ってしまった。


ホント、わたしって可愛くない。



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