Crescent


あれから2週間以上、毎日のように掛かってきていた琴音ちゃんからの電話はぷつりと途絶えた。



それだけの事をしてしまったんだ連絡がないのは仕方ないさ。



そう思いこの2週間過ごしてきた。



この先、琴音ちゃんともう会うことがなくたって別に何にも変わりはしない。



来てくれるお客さんのためにパンを作る。
ただ琴音ちゃんを知らなかった頃に戻るだけだ。



彼女の事なんて忘れてしまえばいい。





そう思って忘れようとしたけど。
無駄な事だった。


琴音ちゃんのいなくなった隙間を埋めるものなんて見付からず。



いつからだろう。
忘れる事ができないほど俺の心の中に深く入り込んできたのは。



掛かってくるはずのない電話を待ち続けていた。



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