Crescent


多分、澤野さんだ。パッと後ろに振り向いたら、やっぱり彼だった。



澤野さんの姿を確認した途端、私の心臓はドキンッと跳ねて早打ちし出した。



「琴音ちゃん、お待たせ」そう言って私の隣に座った。


「ここで、こうして澤野さんと眺めるのは三度目ですね」


「そう云えばそうだね」
彼は月を見上げた。


横顔をそっと見つめながら思った。



私、きっと澤野さんの事が好きなんだ。

月を眺めている澤野さん。
私の話しを聞いてくれる時のあの優しい笑顔もパンの事で熱く語る所も……。
いつの間にか好きになってたんだ。



「どうかした?」


「何でもないです」


気付いたばかりの想いを告げる事は出来なかった。



告げる勇気もなかったし伝えてしまったら、この関係が壊れてしまう気がして。


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