ファンレター
激しい低音は、耳だけじゃなく体の奥にまで振動を伝えた。
中に入ると、一層すごい。
タバコの煙とスポットライト。
テーブルや人にぶつかりそうになりながら、私は必死に大北さんの後をついて奥へと入って行った。
でもみんなそんなことお構い無しのように、笑って、しゃべって、踊って……。
まるで別世界だ。
これが、十の世界なのかと思うと、やっぱり少し遠い存在に思えてきた。
なんだか、切ないな…
「あー!昼間の泥棒じゃん」
…!!
越えに振り返ると、昼間のあの女の子たち。
やっぱり来てたんだ。
「来る資格ないって言ったじゃん」
「どの面下げてここ来てんの?」
「あのっ…その、ごめんなさい」
肩のひもをつかまれる。
気付けば大北さんの姿は、どこにも見えなくて。
周りには人がたくさんいて、方向感覚も失ってしまいそうだ。
ど…どうしよう……
「ちょっと外出なよ」
一人に腕を引っ張られ、別の子には背中を押され。
このままどこかへ連れ去られるんじゃないかという恐怖まで押し寄せてきた。
「謝りますから!すみません。離してくださいっ」