ファンレター
さっきの場所と違って、裏の廊下は明るかった。
通りかかる人が、桂カメラマンの頭をたたく。
「泣かすなよー、桂」
「違うって!」
飾り気のないグレーの板に、シルバーのドアノブ。
桂カメラマンが、ゆっくり扉を開けた。
「貸しが増えたぞ、十。来週焼肉な!」
そう言い残すと、私に手を振り、桂カメラマンは会場へと戻って行った。
小さな部屋の中には、低いテーブルと黒いソファ。
そして…
深く帽子をかぶって座ってる、ずっと会いたかった人。