ファンレター
「え…、羽田さ…ん?驚いた!どうしてここにいるの?ていうか、なんで泣いてるんだよ。何かされた?どうやって来た?」
立ち上がった十が、私の側に駆け寄ってくる。
ひとつひとつの言葉がしみ込んで……、もう我慢なんてできないよ。
「十っ!」
黒いTシャツの上で、オレンジ色のシャツがなびく。
私は十に飛びついた。
男の子なのに、やわらかい感触。
昔と変わらない、十のにおい。
私は十の空気だけで、胸がいっぱいになった。
十…
十に会えた。
やっと会えた。
夢中で、なにもかもが頭の中から消えていく。
もうだめ、ここから動けない。
十の側から、離れたくない。
私は何も言えなくて、ずっと十の胸に顔をうずめてるだけ。
どれくらいの時間そうしてたか。
十は何も言わず、ただ私の頭をポンポンと撫でてた。