ファンレター
「え、ホスト?アハハ。違う違う、あの人はここのオーナーだよ。若いのに面倒見がよくてさ。結構慕われてるんだ」
桂カメラマンは、顔の印象と同じで明るくて優しい人だった。
さっきまでの不安が嘘みたい。
あんまり気がゆるんで、私は脱走中の身であることさえ忘れてしまいそうだった。
「十はかわいらしいやつだよ。CM撮りしてから結構仲良くなってよく遊ぶんだけど、君の話もよく聞いててさ。口では言わないけど、きっと君に会いたいんだろうなって、前から感じてたわけ」
「十が、私のことなんて話すんですか」
「なんて言うか、はっきり言わないんだけど、あいつ素直だから。こんな子がいるんだーみたいな例え話をよくしててさ。僕らも一応経験豊かな大人だから、結構わかっちゃうんだよね、本心が。それで偶然君と会って、もしかしてこれはって感じてさ。大北さんに頼めばなんとかなるかなと思ったんだけど、結果、大成功って感じかな」
桂カメラマンの話に、自然と頬が緩んでく。
十…
信じられなくて、うれしくて。
ただ、もっと聞きたかった。
十の毎日が、どんな風なのか。
仕事は順調なのか。
今後の予定は?
そして
……濱田サキとのことも。