ファンレター
コンコン
音と同時に、扉が開く。
音楽は、夜のFUTURE SPACEの中を常に流れてた。
「ん?桂は帰ったの?」
「いえ、トイレです」
「あ、そう。まだいたのか。あいつがいたんじゃ、君たちいつまでも眠れないよな」
部屋に入って来た大北さんが、申し訳なさそうな顔で向側のソファに腰を降ろした。
「いいんです全然!眠れなくても平気。楽しく会話してもらって、すっごく幸せです!」
と、返事をしたのは多美だった。
抜け目がない。
「ま、あいつもオレに負けじと面倒見はいいからな」
「ほんとですよね。もっと詳しく教えてください!桂さんのこと」
「えっ…、桂の事!?」
大北さんが、あっけに取られるのも仕方ない。
多美は目を輝かせてる。
やれやれ…
「ちょっと私もトイレ…」
ごめん、多美。
私も同類だと思われるのは遠慮しておくよ。
私は一人廊下に出ると、壁に寄り掛かって一つため息をついた。