ファンレター



コンコン



音と同時に、扉が開く。

音楽は、夜のFUTURE SPACEの中を常に流れてた。



「ん?桂は帰ったの?」


「いえ、トイレです」


「あ、そう。まだいたのか。あいつがいたんじゃ、君たちいつまでも眠れないよな」



部屋に入って来た大北さんが、申し訳なさそうな顔で向側のソファに腰を降ろした。



「いいんです全然!眠れなくても平気。楽しく会話してもらって、すっごく幸せです!」



と、返事をしたのは多美だった。

抜け目がない。



「ま、あいつもオレに負けじと面倒見はいいからな」


「ほんとですよね。もっと詳しく教えてください!桂さんのこと」


「えっ…、桂の事!?」



大北さんが、あっけに取られるのも仕方ない。

多美は目を輝かせてる。

やれやれ…



「ちょっと私もトイレ…」



ごめん、多美。

私も同類だと思われるのは遠慮しておくよ。



私は一人廊下に出ると、壁に寄り掛かって一つため息をついた。





< 173 / 218 >

この作品をシェア

pagetop