ファンレター
「だからそれ、手紙。前に涼ちゃんがくれたやつの返事って感じかな。直接話すつもりがこんなことになっちゃって…。急いで書いたから汚い字だけど、ごめんね」
しょぼんとした十の顔に、また胸が締め付けられる。
ばか…
「別にいいのに…。普通ファンレターに、返事なんか期待しないでしょ」
「え?あれファンレター?なんか親みたいなことばっかり書いてあったけど」
「うるさい!もう私学校行くから」
「あ、待ってよ涼ちゃん」
ほら、あの時みたいでしょ?
私…期待しちゃうんだから。
「学校、気をつけて行ってね」
「……うん」
私のかばんを引っ張る十の手が、ゆっくり離れてく。
なんだか少し不安。
「また……会えるんでしょ?まだこっちにいるんだよね」
笑顔で手を振っている十。
周りに人が増えて、だんだん見えなくなっていく十。
人気者の十。
みんなの十。
ねぇ十……
私はやっぱり邪魔じゃない?
たった一本の桜の木が、私と十の間をとても遠く感じさせた。