ファンレター
昼休みになる頃には雨も激しくなって、窓を開けることもできなくなった。
蒸し暑さに耐え切れなくて、ハンドタオルが何度も顔を往復する。
「ちょっとタオル濡らして来る」
多美が教室を出て行くと同時に、私はポケットの中の紙に気がついた。
そういえば、十に手紙をもらってたんだ。
誰も見てないのはわかってるけど、私はこっそりトイレに行かずにはいられなかった。
ドキドキする。
まるで、ラブレターでももらったみたい。
開くのがもったいなくて、何度もポケットから出したり入れたりを繰り返した。
見てしまっていいのかな。
あまりトイレでするものじゃないけど、大きく深呼吸してみる。
そっと開いた紙に広がるのは、懐かしい十の書く文字。
見るのは中学以来。
最初の言葉には、自然と胸が高鳴った。