やまねこたち
そして、目が覚めたら朝だった。
何時間くらい寝たんだろう。
体を起こすと、妙に頭がすっきりしている。
あぁ懐かしい、熱が引くとこんな感じだったな。子供のときを思い出すわ。
あたしはリビングに寝かされたままで、床では豹と蓮二が大の字になって寝ている。
こいつら、まじで頭大丈夫だろうか。今は真冬だってのに。
似たもの同士仲良く寝てるのかな。
2人を見下ろしながら、あたしは時計を見た。
頭痛が嘘みたいになくなった。喉は多少痛いけど、昨日みたいに喋りずらいってことはない。
体も昨日よりは随分楽になった。間接が少し痛むけど。
そこで、玄関が開く音がする。
首を伸ばすと、カレンと麻月が居た。
「艶子!起きてて大丈夫なの?」
珍しくカレンが心配してくれる。口にはしないけど、気持ち悪い。
「昨日のこと、知ってるの?2人とも仕事だったでしょ」
「知ってるも何も、昨日蓮二から薬が減ってるって連絡あったのよ。麻月とあたしは飲んでないし、消去法的にあんたでしょ?心配してたのよ」
「…そうなの」
カレンの冷たくて綺麗な指が、あたしの顔に触れた。
「大丈夫そうで安心したよ。艶子、仕事のほうは?」
「なんとか最後までやりきった。殺してから体調が激変したから、まだ運がよかったのかも。ただ、寄り道しちゃって…」
公園の植木の中で隠れていたことを思い出す。
思い出すと、あれはまずかった。明らかに不審行為。
事件現場の近くで不審行為なんてご法度なのに。
「…仕方ないわよ、今回は。艶子なら大丈夫よ」
「そうだよ。道端で吐いたりとかしてないでしょ?」
「ぎり、してない」
「まだニュースにもなっていないし、遺体が発見されるのはきっともっと後だ。その間には足跡なんて消えてると思うよ」
麻月があたしの顔を覗き込んでくる。
山猫の中でも腹黒ツートップにここまで心配されるとなると、ますますあたしはどんな薬を飲んだのか大変恐ろしくなってきた。
「で、どうだったの?薬の感想は」
「あぁ、それね。僕も気になる」
カレンがソファに腰掛けて、あたしの顔を見つめた。
昨日のことを思い出してみる。
「はじめは何とも思わなかった。ただ、いつもより寒気がするなー、程度で。そんで時間が経って、さぁ家に帰ろうとした瞬間に、いきなり熱くなった」
「温度変化が激しいみたいだね」
「おう、まじで。冬なのにありえないくらい汗かいた。そんで、今まで体験したことも無いくらいの頭痛と、喉の器官が焼け爛れるみたいな激痛が酷かった」
思い出すと、ぞっとする。器官が膨れ上がって、息ができないような苦しさだった。あれはまじで、2度と体験したくない。
「吐き気もひどくて、眩暈でまっすぐ歩けない。そんでまずいと思って、公園の植木に隠れたんだ」
「そうだったの、随分強烈な症状ねぇ」
カレンが眉を寄せながらそういった。
あたしも人生で1番辛かったかなと今更ながらに思った。